以前にバルミューダ株式会社の寺尾玄さんについて取り上げましたが、今回の記事は寺尾さんの第二弾になります。
今から約10年前に世界に対して猛威を振るった「リーマンショック」
当時のバルミューダ株式会社はリーマンショックの影響をモロに受けて、倒産の危機にまで陥ったそうです。
そんな中、社運を賭けた一世一代の大勝負にでたバルミューダが投じた製品が『GreenFan』だったわけです。
この『GreenFan』が予想以上に売れるヒット商品になりました。
バルミューダといえば圧倒的にスタイリッシュなデザインの家電が有名ですよね。
実は、一つの製品をマイナーチェンジさせていく戦略ではなく、新しい製品をどんどん生み出していくという戦略で事業を拡張させてきました。
つまり、一世一代の大勝負に大勝利した『GreenFan』をマイナーチェンジして横展開を図るということは敢えてせずに、『GreenFan』に変わる家電をイチから生み出すということです。
会社を大きく変えてくれるのは、いつだって商品しかないんです。しかも、不可能を証明することはそれこそ不可能です。なぜならまだ不可能を打開する方法を思いついていないだけかもしれない。
出典:「六本木未来大学」第15回「寺尾玄さん、新しい体験を提供するって何ですか?」講義レポート【前編】
会社を大きく変えてくれるのは「商品」と言い切っていますね。
この価値観に沿ってこだわり抜いたモノを生み出し続けたからこそ、いまのバルミューダの実績に繋がっていると思います。
それにしてもたくさんのアイデアが必要になってきそうですよね。
しかも、既成概念にとらわれずに自由な発想から始めるという特徴があり、創業者である寺尾さんを筆頭に、創造への強い意欲とこだわりをとても感じます。
どこからそのようなアイデアが浮かんでくるのでしょうか。
天才クリエイティブ集団を率いる寺尾さんのアイデア出しについて調べてみました。
「ひらめき」はリラックスと緊張を繰り返すことが大事
寺尾さん曰く、アイデアはリラックスしている状態でポンって出てくるそうです。
シャワーを浴びている時とか、お酒を飲んでいるときとか。
しかし、単なるリラックス状態が大事ということではなさそうです。
緊張状態とリラックス状態を繰り返す中で、ひらめきが生まれるんだとか。
普段から仕事モードでいろんなことを考えているからこそ、リラックス状態になったとしてもその思考が脳に残っているんです。そして、リラックス状態になったタイミングでそのアイデアの本質がフッと姿を見せる。そして、その本質を嗅ぎ取ってアイデアを具現化させていくそうです。
ふとしたときにいいアイデアが頭によぎり、持っているスマホに瞬時にメモするということは多くの人が実践したことがあると思います。
しかし、大事なことはリラックス状態と緊張状態を繰り返すということだったんですね。
また、アイデアの正体は既存のアイデアの掛け合わせともおっしゃっています。
ここでバルミューダの看板製品である『BALMUDA The Toaster』の誕生秘話の話をしたいと思います。
土砂降りの2014年5月のある日。
会社のメンバーで企画していたBBQの開催を中止することも考えたそうですが、思い出になるからという理由で決行します。そして、全員がビショビショになりながらのBBQは本当に思い出になったそうです。
その時に、炭火で焼いたトーストの味が抜群だったそうで、「このトーストを再現できればバルミューダ製のトースターができる!」と考えた研究チームは翌日からさっそく実験を開始。
炭を変えたり、熱源からの距離を変えたり、いろいろ試行錯誤しても、なかなかあの味を再現することはできません。手詰まりになりそうなその時にあるメンバーのヒトコト。
「あの時、すごい雨が降ってましたよね?」
これです。
このヒトコトから「蒸気を使う」という発想に至ったそうです。
『BALMUDA The Toaster』とは、「高性能なトースター」×「蒸気」で生み出された製品だったということですね。
製品の良さを伝えるためのコミュニケーション
以前の記事にも書きましたが、バルミューダは「マーケティングに比重を置いていない」で有名な会社です。
しかし、ユーザーへのコミュニケーションに対しては、ものづくりと同じくらい重視しています。実際の『BALMUDA The Toaster』のWEBページを見ていただくと分かりますが、凄まじく作り込まれています。
『BALMUDA The Toaster』のスペックの説明や開発秘話などもありますが、個人的な特筆は『BALMUDA The Toaster』を使用したレシピの豊富さです。
カリカリのベーコンエッグトースト
https://www.balmuda.com/jp/toaster/recipes/006
ローストビーフ
https://www.balmuda.com/jp/toaster/recipes/043
上記のレシピはほんの一部分ですが、100種類以上のレシピが掲載されています。
WEBページはユーザーへのプレゼンテーションという考え方なので情報量が非常に膨大です。
『BALMUDA The Toaster』を通して、「どんなライフスタイルが送れるのか?」であったり、「どんな美味しいものが食べれるのか?」という顧客体験を突き詰めています。
『BALMUDA The Toaster』購入後の楽しみを鮮明に描くことができます。
何度も書きますが、顧客が求めているのは「製品」ではなく「体感」です。
モノやサービスを通してどんな体験ができるのか。
これに関しては仕事にはもちろんのこと、普段のコミュニケーションから生かせる内容なので、早速実践したいと思います。