「人工流れ星」の実現なるか!岡島礼奈さんの考える宇宙エンターテインメントと科学の関係

つい先日、NASA(アメリカ航空宇宙局)が、アポロ計画以来の宇宙飛行士を月へ送る「アルテミス計画」の第一歩となるロケットを打ち上げたというニュースが発表されました。
また、11月は「しし座流星群」が観測できることも天体ファンの中では話題となっているようです。

私たちはこのようにネットやニュースによって、自然と宇宙や天体について興味関心をもつことが多いのではないでしょうか。
そして、今では宇宙をフィールドにしたビジネスも増えているようです。

今回取り上げる女性経営者の岡島礼奈さんも宇宙をエンターテインメントと捉えてビジネスを立ち上げたおひとりで、2023年に「人工流れ星」を実現させようと挑戦中です。

この挑戦が始まったきっかけも、岡島さんが東京大学在学中に友人と見た、しし座流星群だったそうです。

今回は、岡島さんが宇宙エンターテインメントビジネスで実現させたい「人工流れ星」と、その先のビジョンを中心に紹介していきます。

https://www.kinzoku.co.jp/media/2020/10/13/52 より

しし座流星群からヒントを得た「人工流れ星」とは

岡島さんが実現しようとしている「人工流れ星」。

しし座流星群を観測している時、友人からの「小さな粒を宇宙で放てば自分で作れる」という一言がきっかけだったそうです。

流れ星はスターダストとも言われ、宇宙の小さな塵が大気圏に突入する時に明るく光ったもの。
岡島さんは、今挑戦している「人工流れ星」についてこう語っていました。

私たちが自ら開発した人工衛星の中に、1センチほどの大きさの「粒」を積み込んで打ち上げます。地球の周りを回る人工衛星が宇宙空間でこの粒を放出し、大気圏に突入したものを地上から見ると、それが流れ星に見えるのです。

https://globe.asahi.com/article/14414843 より

人工流れ星を実現させるために岡島さんが立ち上げ、現在代表取締役を務める会社が株式会社ALE (エール)。
2011年に世界初の人工流れ星を創る宇宙のスタートアップ企業として誕生しました。

このALE(エール)という社名にも、岡島さんのビジョンが込められています。

株式会社ALE(エール)を立ち上げるまで

岡島さんは東京大学理学部で天文学を学び、2008年同大学院で博士号を取得したのち、29歳でアメリカの大手金融会社のゴールドマン・サックス証券に入社します。

理由は、在学中に、天文学は税金で研究しているのに役に立たない、と天文学に対する世の中の評価が低いことを知り、そこから、天文学を活かした基礎科学の発展に貢献したい、という想いが芽生えたからだそうです。
基礎科学の発展のためにはお金が必要で、まずは資本主義を知りたい想いで、こちらの証券会社を選びました。

ですが、入社1年目でリーマン・ショックの影響を受け、翌年には退職することになります。

その後、転職活動をされたのですが、博士号を取得したことが逆に職に就くことの妨げとなっていたため、30歳の時、友人とコンサル会社を起業をして生計を立てていったそうです。

その頃ちょうど、探査機「はやぶさ」が7年ぶりに地球に帰ってくるという話題もあり、岡島さん自身の「人工流れ星」に対する想いも強くなっていきました。
そして、人工流れ星で誰かに先を越されるのはイヤ、と思って技術研究を始めたそうです。

そして、2011年、いつか人工流れ星を見ながら好きなビールをみんなと飲みたい、とビールにちなんだ「ALE(エール)」と名付けた会社をたったひとり、自宅のリビングで子育てをしながら立ち上げました。

最初から人工流れ星を実現させることが、この会社の目標であり、自ら開発した人工流れ星を仲間とビールを飲みながら見るのが、岡島さん自身の夢・ビジョンとなっていたのですね。

ビジョンから実現させたいこと

今では、そのビジョンが発展して、会社としてのミッション・ビジョンにもなっているようです。

会社のミッションと3つの事業

株式会社ALEは「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にすること」をミッションに掲げて、宇宙のスタートアップ企業として以下3つの事業に取り組んでいます。

  • 宇宙エンターテインメント事業(SKY CANVAS)
  • 大気データ事業
  • 宇宙デブリ対策事業

これら3つは「宇宙を、好奇心に動かされた人類の、進化の舞台にする」というビジョンをもとに動いていますが、大きな柱が1つ目の事業「SKY CANVAS」だと思います。

「SKY CANVAS」から基礎科学の発展へ

「SKY CANVAS」は、宇宙を大きなひとつのキャンパスと捉えて、世界中あらゆる場所で人工流れ星を降らすという、岡島さんが考える宇宙エンターテインメントの形です。

エンターテインメント、つまりは人々の好奇心を生ませるもの。

人工流れ星を見上げた人々に宇宙や科学に対しての好奇心を持ってもらうということは、人類を基礎科学の力で前進させることに繋がると考えていらっしゃいます。

基礎科学の前進は2つ目の「大気データ事業」に繋がります。

人工流れ星から得た大気データを、気象変動のメカニズムの解明に役立つデータとして蓄積することで、基礎科学の発展に貢献できると考えています。

3つ目の「宇宙デブリ対策事業」では、宇宙開発の発展のために、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と共同して、宇宙デブリ開発装置を開発しています。

宇宙デブリとは、故障して使用不可になった人工衛星やロケットなどが軌道上で残留し地球を周回している、宇宙の人工物のことです。

これが宇宙に残されたままだと、運用中の人工衛星やロケットがこのデブリに衝突するリスクが高まるそうです。
それを防止するための軌道から離脱させる装置の開発が進むことで、今後更なる宇宙開発、そして宇宙エンターテインメントの促進にも繋がると考えて力を入れているようです。

功績が社会貢献と認められての受賞

これまでの功績が認められ、岡島さんは、独立行政法人中小企業基盤整備機構主催の「第21回Japan Venture Awards」において「内閣府科学技術政策担当大臣賞」を受賞されています。

世界に前例のない宇宙エンターテインメント事業で、実際に人工流れ星を実現させるための人工衛星がロケットに搭載され、その打ち上げが成功していることなど、先ほど挙げた3つの新規事業に取り組んでいることが、起業家のロールモデルとして高く評価されての受賞だったそうです。

https://star-ale.com/news/2021/12/21/2026109.html より

「人工流れ星」の実現に欠かせない定義

実はこの人工流れ星、2020年に初お披露目となるはずだったそうですが、流れ星の元を放つ装置に動作不良が発覚したため、2023年に延期となったのです。

その時、岡島さんは「あと3年もかかるのか」と思い、「モチベーションをなくして、会社を去ってしまう従業員が出てくるのではないか」と心配したそうです。

ですが、この延期をきっかけに会社を去る社員はゼロとのこと。

これは、岡島さんが、過去チーム作りの失敗から得た、チームビルディングで大事な3つ「ビジョン」「ミッション」「バリュー」の定義を貫き、それがみんなに伝わっていたからだと、ご本人はおっしゃっています。

その、岡島さんがチームビルディングをする上で大事にしている考え方とは何か。
追って、こちらでも迫っていけたらと思います。

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