山崎敦義さんが経験したLIMEX(ライメックス)開発の苦悩とユニコーン企業への躍進

EY アントレプレナー・オブ・ザ・イヤー・ジャパン /EY Japan

評価額が10億ドル(約1040億円)を超える、設立10年以内の未上場のベンチャー企業であるユニコーン企業。

以前、ユニコーン企業の一つであるスマートニュース株式会社の鈴木健(すずきけん)さんについて記事にしています。

今回は、新素材『LIMEX(ライメックス)』を開発する株式会社TBMの山崎敦義(やまさきのぶよし)さんについて記事にしていこうと思います。

中卒で大工見習

山崎敦義さんは1973年11月21日に大阪府の岸和田市で生まれます。
岸和田のだんじり祭りではだんじりを曳いたりもしていて、中学校の友達の中でも目立つタイプだったそうです。

高校に進学するときに、周りのように高校に行くという感覚になれずに、働けば好きなもの買えるし、親にも悪寒を入れられると考え大工見習いとして働き始めます。

働き始めて最初に感じたことは、高校に行った同級生たちは制服を着て青春を謳歌している中、自分はドロドロになった作業着を着ているというギャップでした。

現場には夢を掲げている人も少なく、自分も10年後はこんな風になるのかと思ったそうです。

最初の企業は中古車販売会社

山崎敦義さんは中古車販売会社として20歳の時に起業。
自分自身の可能性を諦められなかったことと、後輩達にどんな状況からでも夢は見られるということを証明するために仲間とともに始めました。

中古車販売では始めた理由として、車が好きだったことと免許を取ったら車を買う人が多かったと話しています。地元のコミュニティを中心に、中古車という定価がない中で、山﨑先輩のところなら安心だと信頼感から売り上げも順調だったようです。
自分が頑張ったら、頑張った分だけ返ってくるというのが楽しく仕事に夢中でした。

販売代理店からメーカーへ

山崎敦義さんがヨーロッパに旅行に行った際に、何百年もたっている建物に歴史の重みを感じたそうです。一緒に仕事をしている仲間たちが世界で挑戦できるような事業をやりたいと感じるようになったそうです。

そんな中、2008年にストーンペーパーと出会い、エコについて考えるようになり始めた時代からも面白いと考え、販売している台湾のメーカーに依頼して日本の正規代理店としてスタートします。2011年8月に立ち上げたのが株式会社TBM(Times Bridge Management)です。
「時代の架け橋になる事業を経営し続ける」という思いが、Times Bridge Managementの頭文字である社名の由来になっています。

ストーンペーパーは、石灰石を材料にした紙で木を伐採しない、水を必要としないといった製造工程がエコなこと、耐水性に優れているといった特徴があります。

当時、大企業からのオファーもたくさんあり期待されていましたが、提供される製品のコスト面と品質の折り合いがつかずなかなか売れなかったそうです。

メーカーに伝えても品質が改善されず赤字がかさむ中で、多くのオファーがあったこともあり、大きなビジネスチャンスを感じ、2010年ごろから新素材の自社開発を開始しました。

LIMEX(ライメックス)でユニコーン企業入り

自社開発して出来上がったものが新素材であるLIMEX(ライメックス)です。

LIMEXは日本でも数少ない自給可能な鉱物資源である石灰石(Limestone)を主原料にしてます。石灰石は古くはエジプトのピラミッドに使われたり、ヨーロッパでも建築や彫刻に使用されています。大理石も石灰岩が変成作用を受けたものです。

LIMEX Pellet(ライメックスペレット)はレジ袋やアメニティなど、LIMEX Sheet(ライメックスシート)は名刺やポスターなどに使用されいます。

実は吉野家のフードメニューや紳士服専門店はるやまの買い物袋にも採用されており、知らない間に見かけていることもあるのではないでしょうか。

導入事例 | 革命的新素材LIMEX(ライメックス)/株式会社TBM

2019年から3年連続でユニコーン企業として紹介され、時価総額も1,336億円になります。

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LIMEX(ライメックス)工場建設の資金調達で学んだ謙虚さと感謝

自社開発に向けて大学の施設を借りたりしながら試作品を作り、工場建設に向けて資金援助の依頼を行っていました。当時は、リーマン・ショックの影響もあり、実績のない第一号の工場建設への資金援助は難しいという連絡や、出資に対しての足元を見られた権利譲渡の依頼などもあったようです。2013年に経済産業省の補助金制度によって工場建設に必要な14億円のうちの9億円程度が採択され、目途が立ちます。

しかし、補助金制度をもらうにあたって、採択から2年以内に工場を完成さえ、ものづくりの試運転まで行わなければならないため、1年は死ぬ気でさらに資金調達する必要がありました。

その中で、山崎敦義さんは「最初は分かってもらえないなら、まぁ、いいや。」とすぐ諦めることもあったそうです。資金調達を繰り返す中で、自分の安いプライドが邪魔になっているなと気づき、時間を取ってもらえることに感謝や断られて場合でも何が足りなくて決断できなかったかなど時には一回り下の若い人にも頭を下げながら次に生かすということを繰り返したそうです。
この時に、謙虚さと感謝を学び、今でもValues(組織の価値観)に入っています。

ピンチをチャンスに変えたLIMEX(ライメックス)の用途

最終的に20億円の総工費で2015年に工場が完成。
しかし、工場ができてから、紙の代替品として売れる商品ができるまでの1年半かかり毎月費用だけが掛かっていく時期は恐ろしかったと話しています。今でこそ1年半と分かったが当時はそれが2年になるのか5年になるのかわからなかったことが恐怖だったそうです。多額の資金を投じて原材料を購入するが、ものをつくっても、それが売れないごみに代わっていく。そのごみを処理するのにもお金がかかるという悪循環になっていました。

元々、素材の特性から耐水性や耐久性に優れていたので、プラスチック代替品としても使えるのではないかと考え、紙の代替品を作る中で失敗してごみになった材料を使ってプラスチック代替品の製造をしました。環境問題について考える中で、プラスチック代替品のニーズが急激に高まりピンチをチャンスに変えました。

メーカーとして起業する覚悟

山崎敦義さんの経験からみてもメーカーとして開発を行うということは、初期に資金面でかなり投資が必要になります。その時の資金調達という逆境を乗り越えたからこそ、現在ユニコーン企業に名を連ねるまでに成長しています。

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