宮田昇始氏がSmartHRをユニコーン企業にまで成長させた価値観とは

最近『SmartHR(スマート・エイチアール)』という言葉を聞いたことがある、という方は多いのではないでしょうか。

私自身、テレビや街頭で広告をたまたま見かけ、有名タレントを起用しキャッチーな演出が印象に残っています。

出典:『テレビCM 「年末調整からの解放」篇 15秒』(SmartHR 公式ホームページ CM情報およびSmartHR YouTubeチャンネル

一方、SmartHRという企業やサービス、その創業者である宮田昇始(みやた・しょうじ)氏について、知っているという方は比較的少ないのではないかと思います。

2015年のサービス開始から約6年で登録企業は4万社と、日本を代表するユニコーン企業と呼ばれるにまで急速に成長したSmartHR。
経済産業省等によるスタートアップを支援するプログラム「J-Startup」の対象企業にも選ばれ、今後さらなる成長が期待される企業の一つです。

そして、SmartHRを創業者・CEOとして成長させてきた宮田昇始氏自身も、Forbes JAPAN誌の「日本の起業家ランキング2022」で1位に取り上げられるなど、日本の若手起業家として注目を集めています。さらに、宮田氏は今月でSmartHRのCEOを退任し、同社の子会社であるNstock株式会社のCEOに就任、投資家として新たな事業の立ち上げに注力しようとしています。

今回は、そんな宮田昇始氏の経歴や価値観について紹介します。

出典:宮田昇始のブログ

難病「ハント症候群」との戦いとその経験

宮田昇始氏は1984年生まれで、起業をすることになったのは約7年の会社員経験を経てからのことでした。先日のこのブログで紹介した小川嶺氏と比較すると遅めに見えがちですが、一般的に見れば若手起業家です。

特段、起業志向が強かった訳ではなかった宮田氏。
会社員時代はWebディレクターとして活躍していましたが、会社の事業環境などを考慮し転職、さらにはフリーランスとして仕事をするようになりました。

宮田氏にとっての転機は、フリーランスとなる前に難病の「ハント症候群」との闘病でした。
「ハント症候群」は三半規管に関係する病気で、麻痺や聴覚や味覚への影響があり、まさに「仕事どころではない」闘病を強いられることになります。

結果的には、奇跡的な回復をし、仕事に復帰することになるのですが、この経験から「これからは自分のしたいことをして生きよう」、「自分たちのWebサービスを作りたい」という気持ちが芽生え、宮田氏はフリーランスとしての仕事を始めることになります。

そして、「大変な難病にかかったにもかかわらず、社会保険による経済面の支援もあってスムーズに社会復帰できたこと」も宮田氏のこれからの人生に活かされることになります。

失敗の経験を経て我流から一流の起業家へ

共同創業者の内藤氏とともに、フリーランスとして受託開発の案件も請負ながら、サービス開発に取り組んでいった宮田氏。しかし、2年で2つのサービスを立ち上げるも、どちらもヒットしませんでした。

この時期は「作りたいものを作る」かつ「とりあえずサービスを開発してサイトを公開し、その反響を見る」というスタンスでサービス開発をしていたという宮田氏。
後から振り返ると、この「我流」のやり方で取り組んだことが失敗の原因となっていました。

2つのサービスでの失敗を経て、いよいよ「次がダメなら諦めよう」と腹を括った宮田氏。
ベンチャーキャピタルのスタートアップ企業支援プログラムにも参加し、3ヶ月という期限を決めて取り組みます。

「課題が市場に存在しているのか」、「自分がその課題を本当に解決できるのか」等の視点で、アイデアの段階から関係者にヒアリングするなど、アイディアを出しては検証することを何度も繰り返すなかで、2ヶ月で10個ものサービスアイディアの検証をします。

この時、すぐにいいアイディアには出会いませんでしたが、「アイディアの段階から十分な検証を行う」いわば「正攻法」を学び、これまで2年間で2サービスだけだったアイディアの検証の経験をそれまでの何倍も経験しました。そして2ヶ月を過ぎたところで、とうとう今のSmartHRの原点となる「社会保険手続きの簡素化」アイディアに出会います。

きっかけは奥様、そして自身の経験が「SmartHR」への使命感に

実は、「社会保険手続きの簡素化」というアイディアは、宮田氏の奥様が産休・育休の申請書類を記入している姿を見て、宮田氏が気づいたといいます。
「社会保険という仕組みはとても大切だが、手続きは煩雑。特に、不定期で発生する作業は申請者も不慣れで手間がかかりがち」という視点は、SmartHRにも活かされています。

また、宮田氏自身にも、ハント症候群の闘病経験から「社会保険に助けてもらった自分こそ、このサービスに取り組むべき」という使命感のような気持ちがあったといいます。

ユニコーンとして大きな企業となったSmartHRですが、その根幹には創業者自身の体験から来るニーズと使命感があります。

成功するまで食らいついた経験が最高のアイディアに繋がる

今回は、宮田昇始氏のSmartHR立ち上げの経緯を紹介しました。
こうしてみると、ちょっとした動機でスタートしたフリーランスの道を「途中で投げ出さず、結果になるまでやる」と食らいついてきたことがSmartHRの成功の1番の原因のように思えます。

宮田氏が、結果になるまで続けてきたことが、使命感を持つほど打ち込めるサービスに繋がりました。

次回は、ここまでSmartHRのトップとして活躍してきた宮田氏の現在の価値観や今後について紹介します。

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