前回の記事では、青野氏の略歴や青野氏の「自分と会社のビジョンを照らし合わせる」という考え方について紹介しました。
今回は、最近の青野氏の取り組みや選択的夫婦別姓の運動、その背景にある青野氏の考え方について紹介します。
自身が経験して訴える『選択的夫婦別姓』
青野氏が選択的夫婦別姓を訴えるのは、青野氏自身が結婚をした際に改姓をしていることが大きな理由です。
「青野」という姓は旧姓で、結婚を機に奥様の姓に改姓されているので、戸籍上の姓は「西端」です。
青野氏も結婚する際は、旧姓を名乗ることにはさほど抵抗はなかったそうですが、いざ旧姓を使って生活していると困ることもあったそうです。
例えば、海外に行った際にパスポートの名前と自分の通称が異なることでホテルのチェックインがスムーズにできなかったり。
国内でも社長として仕事をする際には、どうしても本名が必要なため、手続きに時間がかかったりと不便な経験を多くされています。
夫婦別姓については、メリットもデメリットもあるので、一概にどちらが良いとは言い切れません。
ただ、改姓をした人のデメリットを世の中に訴えている点は、青野氏の行動の特長的な点です♪
実際に、改姓によって起こる不自由さを自分が体験しているからこそ、ご自身で訴えを起こすほどの問題意識があり、行動に説得力があると感じます。
サイボウズ立ち上げの際もそうでしたが、問題意識を感じたら行動にする行動力は青野氏の武器になっています。
チームワーク、ビジョン、そして『フラスコ理論』
サイボウズのトップとしては、「チームワークあふれる社会を創る」というビジョンを掲げています。
よりチームワークが発揮されやすい会社にするために、経営者として、働き方改革や夫婦別姓の問題に積極的に取り組んでいることは、サイボウズほどの大きさの企業では珍しいと言えます。
また、「フラスコ理論」という考え方を青野氏は提唱しています。
フラスコの持ち手の部分は細く出口から絞られて出てくるように、「多様なアイディアはビジョンによって方向性が定まることで斬新なアイディアになる」という考え方です。
また、ビジョンだけではなく、副業の容認や社内外の人が交流できるハブのようなスポットを社内に設けるなど、アイディアの多様性のための方策も実施しています。
「チームワークあふれる社会を創る」というビジョンのもとで、これからもサイボウズは成長を続けていきそうです。
投資家の意見も取り入れる!?『SaaSの経営指標』の公表
2024年2月27日、サイボウズ株式会社の2023年12月期決算・事業説明会がオンライン配信され、ARR(年間経常収益)や解約率など、SaaSの経営指標を同社として初めて発表しました。
しかも、青野氏自身が「今まで都合のいい話だけしていた」と話したように、前向きではない内容のものでした。
初発表の理由には触れられていませんが、サイボウズがこれまでこうしたIR関連の指標の開示には業界他社と比較して非常に慎重で、「業績のよさの割に投資家からの評価が低い」と言われていたこともあり、このニュースはメディアでも取り上げられています。
サイボウズ青野社長「今まで都合のいい話だけしていた」、重要指標を初開示へ。投資家の声応える | Business Insider Japan
では、サイボウズが投資家向けにより多くの情報を開示していく方針になったかというと必ずしもそうではないようです。投資家に対する対応は、以前よりは前向きになりつつも、「1対1での面談は行わない」等、業界他社との比較では相変わらず慎重と言われています。
以前、青野氏は、かつてサイボウズの株価が乱高下した経験を踏まえ、株価よりも配当を重視するとの考えを述べています。単なる市場価値の増加ではなく、ビジョンに沿った経営を中心に置くことで、多様化と企業成長の両立を目指しています。
一方で、今回のIR関連の指標の発表を踏まえると、「これからは投資家の考えも含めて、より多様なアイディアを取り入れていこう」と考えているようにも見受けられます。
ビジョンは変わらず、取り入れるアイディアをより多様化していく方針は「フラスコ理論」に通じるところがあります。
青野氏の改革はどこまで続くか?
今回取り上げた、「フラスコ理論」における「ビジョンによって方向性が定まって初めて、多様なアイディアが良いアイディアになる」という考え方は、企業に限らず、身近な人間関係においても有益な考えだと思います。
「ビジョンをもとに、多様なアイディアを取り入れ、成長を目指す」青野氏の取り組みには、これからも注目し、私自身の学びにしていきたいと思います。
※2024年3月12日:内容を一部更新しました。