庵野秀明さんが監督として社長として責任をとり自由に創作するスタジオカラー

今年は『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』の公開もし、今月から始まった庵野秀明展。そんなスタジオカラーの社長でもある庵野秀明(あんのひであき)さんについて今回は書いていこうと思います。

スタジオカラー設立までの経緯

1960年に山口県宇部市に生まれる。子供のころからアニメや特撮が大好きで、土曜日の20:00からは『8時だョ!全員集合』よりも、『人造人間キカイダー』や『キューティーハニー』を見ていて、当時は月曜日に話の話題についていけないと思うこともあったそうです。

高校時代には美術部で部長もつとめながら、高2の時に貯金で8ミリフィルム機材を購入し、実写・特撮・セルアニメなどを制作。高校卒業後は、一浪のすえ大阪芸術大学映像計画学科に進学。SF研究会に所属し、友人からの誘いで『第20回日本SF大会大阪コンベンション(DAICON 3)』のオープニングアニメーションの制作に参加。この時のメンバーはDAICON 3の終了と共に解散の予定でしたが、1983年に開催されるDAICON 4に向けてDAICON FILMが結成し自主映画活動をスタートしました。

DAICON 3の評価から1982年に公開された『超時空要塞マクロス』の制作に参加。この時に原画をアルバイトで担当していた貞本義行さん(漫画版『新世紀エヴァンゲリオン』の作画)と出会う。
『風の谷のナウシカ』の作画スタッフの募集告知を見て上京し原画担当として採用されました。

1984年にDAICON FILMのメンバーで劇場用映画『王立宇宙軍 オネアミスの翼』の製作を目的とした株式会社ガイナックスの設立。

その後、1988年から1989年にかけて放送された『トップをねらえ!』で初監督デビューし、1990年から放送された『ふしぎの海のナディア』でも監督を務める。そして、1995年に監督を務めて多くの人に影響を与えたのが、『新世紀エヴァンゲリオン』です。

私生活では2002年に貞本義行さんによる紹介で知り合った。安野モヨコさんと結婚。安野モヨコさんは漫画家で、土屋アンナさんが主演を務め、蜷川実花さんが監督を務めた『さくらん』や菅野美穂さんが主演を務めた『働きマン』を書いています。

1999年に告発された脱税事件をきっかけにガイナックスの取締役に就任するも、給与体系や社内システムの改善などの進言をしても取りあってもらえなかったため、庵野秀明さん自身の意見を経営に反映し、スタッフに賃金を分配できるようにとして、アニメ制作会社『株式会社カラー』及び制作現場となるスタジオカラーを2006年に設立。妻である安野モヨコさんも取締役に名前を連ねています。

計算した投資と回収で無借金経営

庵野秀明さんは当初、スタジオではなく個人事務所レベルを考えていて、轟木一騎さんと共に、固定費を抑えるために西新宿の雑居ビルからスタートしたそうです。資本金は1000万円ありましたが、初期費用や轟木一騎さんの給料も資本金から払っているという状況でした。

映画製作を始めるにあたり、スタジオにする必要があったためにスタジオ化、社員やスタッフの数も徐々に増えているそうです。
最初の『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の製作において100%出資し、この作品が興行収入20億円を超えたことで安定したキャッシュフローで採用もできたようです。エヴァというコンテンツの強さから「このぐらいならば投資を回収できる」という、最低のリクープライン(採算ライン)で最初は製作を行っていました。

ちなみに、近年は通常製作委員会方式をとることが普通になっていて、10%~20%の出資比率で行うことが普通なようです。100%出資した理由として、ガイナックスで『新世紀エヴァンゲリオン』を制作した時に製作委員会へ出資をしていなかったため、エヴァがヒットをし、注目を集めたものの、利益としては監督印税と脚本印税だけだったという反省もあるのかもしれません。

『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』の成功が、次回作の製作につながり、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の興行収入40億円という結果や『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』は興行収入53億円という結果、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』はすでに興行収入で80億円を突破しています。採算をしっかりとれることが安定の上ですごく大事な観点だなと思いました。

ファンとスタッフに喜ばれることをする

作品を実際に作っているのはスタッフであり、その土台を支えてくれているのがファンという想いがあるので、作品を作り続けるには、両者に対して還元をしていく必要があると庵野秀明さんは考えています。逆に人気商売なので当たらなかった時はみんなで貧乏になるという考えのようです。

スタッフには賞与や社員旅行も福利厚生として行っています。
社員旅行は打ち上げも兼ねていたりして、スタッフの家族も参加されていたりするそうです。また、スタジオカラーライブツアーとして社員旅行でカラオケ大会が行われているのも楽しそうですね。
まさかの、残酷な天使のテーゼが社歌。。

また、版権に関しては、DAICON FILMのメンバーでもあった神村靖宏(かみむらやすひろ)さんが社長を務める株式会社グラウンドワークスに任せていて、商売優先ではなくどうやったらファンが喜んでくれるかを大事にしています。

社長と監督の共通点

監督も社長も判断をして責任をとることが仕事と考えているようです。監督としては、脚本が悪いならやらなければいいし、役者が下手ならその役者でも作品が成り立つようにするのが仕事。
松本人志さんとの対談でも、監督はOKかリテイクのボキャブラリーだけでいける誰にでもできる商売と話しています。
ただし、その為にはスタッフ・キャストが監督と認めていること作品内容に関するすべての責任を持つ覚悟があることが必要としています。

社長としても、他の取締役がどうであれ最終的には責任をとるのは社長という考え方のようです。

責任をとるからこそ自由に作品をつくれる

監督として社長として責任をとっているからこそ、自由に作品を作り続けることができるなと思ったのと、安定した経営をしているからこそ優秀なスタッフが集まり、エヴァンゲリオンのようなヒット作が生まれるなと思いました。

実写の方では『シン・ウルトラマン』や2023年に公開予定の『シン・仮面ライダー』の制作もおこなっているようで、エヴァンゲリオンは幕を閉じましたが、今後の庵野秀明さんの作品も楽しみです。

タイトルとURLをコピーしました