中村友哉さんが提案する新しい地球観測インフラ「AxelGlobe」

前回に引き続き、今回は中村友哉さんが起業したアクセルスペースの事業の取り組みと現在目指しているものについて書いていこうと思います。

ウェザーニューズとの出会い

2007年に博士課程を卒業後、中須賀研究室の中須賀教授が大学発ベンチャーを支援する助成金のプログラムを受けていることを知り、プログラムに入れてもらいつつ起業準備をはじめます。

開発だけでなく営業も行いますが、人工衛星の話をすると話題としては食いつきがいいものの、具体的な使い道が提案できず苦戦していました。1年程たったのち、北極海航路(Northern Sea Route/NSR)を航行する船舶へ精度の高い海氷の予測のために人工衛星を必要としていた株式会社ウェザーニューズと出会う。
北極海航路はヨーロッパと日本を含む東アジアをつなぐ航路です。スエズ運河経由、喜望峰経由に続く第三の航路として、近年特に地球温暖化により北極海の海氷が減少したことで注目されています。
航行距離が短くなるため、輸送時間や燃料費を削減できる反面、気象・海象予報の整備が不十分という課題も残っています。

温暖化で注目!北極海航路の現状とメリデメ、衛星で将来性を検証/宙畑

株式会社ウェザーニューズの創業者である石橋博良は船乗りの命を守るという想いから、気象業界の道に進まれています。

想いのある方だからこそ、アクセルスペースとウェザーニューズは発注者と受注者という関係ではなく、一緒に新しいものをつくる共同開発という形で超小型衛星「WNISAT-1」の開発を進められたようです。

「WNISAT-1」は2013年11月21日に打ち上げ、リカバリー機である「WNISAT-1R」は2017年7月14日に打ち上げられています。

企業が本当に欲しいものはデータ

ウェザーニューズと共同開発した「WNISAT-1」や2014年に東京大学と共同で開発を行った「ほどよし1号機」の打ち上げ実績をもとに、小型衛星で実用的なことができると知ってもらい、衛星を上げてみようという集客になる見込みでした。
しかし、営業にいって返ってくる回答はウェザーニューズさんだからできるんですよというものが多かったようです。

なぜなら、超小型衛星のコストは、通常の衛星と比較してコストが安いといっても数億円はかかるからです。通常の衛星は数百億円規模に比べれば安いとはいえ、企業からしたら失敗のリスクも考えると中々投資しにくいものです。

企業が欲しがるのはマイ衛星というハードウェアではなくデータでした。
ウェザーニューズの「WNISAT-1」についても、ニーズが特殊で自社で人工衛星を持つしかないための選択で、欲しいのはデータでした。

そこでリスクを自分達でとって衛星を所有し、そのデータを企業のニーズにあうように提供することを考えました。

ビッグデータと「AxelGlobe」(アクセルグローブ)の今後

超小型衛星の低コストだからこそ、同じ値段で数を打ち上げられる。それにより、世界のすべてを毎日見ることができるようになります。
それが、毎日全地球観測インフラ「AxelGlobe」の構想です。
毎日のデータを蓄積できるということは、世界の最新の情報が分かるというだけではなく、過去のデータの蓄積から今後を予想できると言う事です。

衛星は鶴の群れの様に地球を周回することから、つる座を意味する「GRUS(グルース)」と名付けられています。
「GRUS(グルース)」は地上分解能2.5m(2.5mサイズサイズのものなら認識できるという指標)で、サイズも80cm程度、重さは100kg級の小型衛星になっています。

2018年12月27日に超小型人工衛星「GRUS」初号機の打ち上げに成功し、当初は2週間に1回地球の同じ場所を観測できるという状態でした。
今年2021年3月20日にさらに4台を打ち上げ、計5機になることで2~3日に1回地球の同じ場所を観測できるという状態になりました。
今後は2023年を目標にさらに5機を打ち上げ、計10機による1日1回の観測が出来ることが目標です。

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