10月も終わりに近づき、先週からは急に寒くなりだして、会社ではクールビズ期間に設定されていますが、ジャケットが手放せなくなってきました。
冬になると、星がきれいに見えるようになりますよね。冬に星がきれいに見える理由は空気が乾燥しているため、天体観測を妨げる水蒸気が少ないことが原因の一つのようです。
都内にいると、残念ながらオリオン座しか見つけられない(星の知識が少ないことも原因の一つ(笑))ですが、帰り道が少し楽しくなります。
今回は、小型人工衛星の開発を手掛ける株式会社アクセルスペース(Axelspace)の創業者である中村友哉(なかむらゆうや)さんについて書いていこうと思います。
実は宇宙より化学が好きだった
中村友哉さんは、1979年12月に大阪府堺市で生まれ、三重県伊勢市で育ちました。
小学校時代に天体望遠鏡を買ってもらい、月や土星などを眺めていました。
しかし、それがキッカケで、宇宙に携わって行くつもりだったのかと思いきや、宇宙に対する興味が続かなかったようです。
高校は地元の県立伊勢工業高校にいき、当時は化学が大好きで理学部化学科に進学するつもりで、東京大学の理科一類を選択して進学。
大学で化学を勉強する中で、量子力学でシュレディンガー方程式が出てきた時にこのまま化学を選択することは違うと思い、ガイダンスを見て専攻を決めることにしたそうです。
小型人工衛星との出会い
ガイダンスで、工学部航空宇宙工学科の中須賀真一教授から
「手作りの人工衛星プロジェクトに取り組んでいるから、ぜひみなさんも参加してほしい。一緒に人工衛星を作ろう!」という話をされていたようです。
それを聞いて「面白そう」と目を輝かせた学生と「そんなのできるわけないじゃん」とドン引きした学生に反応が割れました。
中村友哉さんは話を聞いて「面白そう」と思い、研究室を見学し、自分が作ったものが宇宙で設計した通りに動くというチャレンジにワクワクしたので、工学部航空宇宙工学科を専攻。
中須賀研究室にて超小型衛星プロジェクトに参画しました。
中須賀研究室の卒業生には、2010年4月にISS(国際宇宙ステーション)組み立てを主任務とするSTS-131(19A)ミッションに参加した宇宙飛行士の山崎直子(やまざきなおこ)さんもいます。
超小型衛星とは
人工衛星と聞くと、個人的には気象衛星の『ひまわり』などのイメージが強いです。
しかし、実際は『ISS』のような宇宙だけの特殊な環境を利用した実験や研究を行えるサイズは100mを超え、重さも300t(トン)を超えるような有人衛星も人工衛星の一つで、逆に、サイズは10cm四方で重さも1kgといった『CubeSat』のようなものもあります。
サイズによって大型(1,000kg以上)、中型(500~1,000kg)、小型(50~500kg)、超小型(1~50kg)と分類されます。
最近では超小型衛星の中でも『MicroSat(10~100kg)』、『NanoSat(1~10kg)』、『PicoSat(0.01~1kg)』、『femtoSat(0.001~0.01kg)』に分類されます。
大型衛星は1機数百億円のコストをかけ5~10年の長期タイん位で開発を行います。国が顧客ということもあって、失敗を許されない超保守設計になりがちです。
数百億円もコストをかけると確かに、リスクは減らしたくなりますよね。
それに対して、小型衛星は1機30-60億円、超小型衛星は1機3億円以下で開発を行っています。
3機の超小型衛星の開発
中村友哉さんは博士課程まで進み、在学中に『Cube Sat XI-IV(サイフォー)』、『Cube Sat XI-V(サイファイブ)』、『PRISM』という3機の超小型衛星の開発に取り組んでいます。
『Cube Sat XI-IV』は開発期間2年で300万円の部品費をかけ、2003年6月30日にロシアのロケットであるROCKOTにて打上られました。『Cube Sat XI-IV』で中村友哉さんは搭載カメラを担当していました。撮影された300枚以上の地球の画像やステータスを携帯電話へ配信するサービスの提供も行い、
3,000~4,000人の人が登録しました。
『Cube Sat XI-V(サイファイブ)』は太陽電池部分に改良を加えた人工衛星で、2005年10月27日にロシアからCosmos-3Mにて打ち上げられました。
XIをベースに、2009年1月23日には日本のH-IIAロケットに乗せて地球観測衛星『PRISM』が打ち上げられました。PRISMは重さ10kg程度で、進展式屈折望遠鏡によって海岸線の画像も取れるようになりました。
小型衛星に携われる仕事がないなら作る
衛星開発をする仕事をしたいと思うようになりますが、実際には、大型衛星を5~10年かけて開発する大企業やJAXAではスピード感が物足りず、超小型衛星をビジネスとして扱う企業は日本にはなく、アメリカでも衛星を作るのに必要な機器を提供する企業だけという状態でした。
科学技術振興機構(JST)から大学発ベンチャー支援の助成金を獲得したという話を聞き、自分がやりたいことができる企業がないなら、会社を自分で作ればいいと考え起業しました。
そして、起業した会社が株式会社アクセルスペースです。
無から有を生み出す理系の開発
元々は興味のない所から、教授のガイダンスを受けて興味を持ち、仕事にしたいけど働けるところがないから会社を作ってしまうという発想は、まだ見ぬ新しいものを開発していく理系エンジニアならではの発想だなと思いました。
今後の開発が楽しみです。